松尾大社は、京都最古の神社で、その創祀は遠く上代に遡ります。その後、文武天皇の大宝元年(七〇一)に至り、秦忌寸部理が勅命を奉じて、松尾山に鎮まります神霊を山麓の現社地に神殿を営み遷座されてからも千三百十余年を経てまいりました。
特に平安時代にあっては、「賀茂の厳神、松尾の猛霊」と並び称され、皇城鎮護の神として朝野の篤い崇敬が寄せられていました。以来、洛西総氏神、また醸造祖神として全国の酒造家をはじめ醸造関係者よりも別格な尊崇をいただいております。
振り返れば、昭和四十二年から四十六年にかけての所謂「昭和の大造営」に始まり、「松風苑三庭」の築造、昭和天皇御在位六十年記念諸殿舎修復事業。そして平成に入り、平安京遷都千二百年記念大鳥居の建立、平成十三年には御鎮座千三百年を記念しての諸事業などを進めてまいりました。
当社の御遷宮は、平安時代には式年の制度がとられましたが、次第に行われなくなり、現在の御本殿は室町時代の応永四年(一三七九)の建立になるもので、平安初期の御神像三駆とともに国の重要文化財に指定されています。「昭和の大造営」における遷宮事業から数えればおよそ半世紀、本殿御屋根の檜皮の腐朽も著しく、早急な葺替並びに修理の必要に迫られています。
つきましては、この度「平成の御遷宮」として、御本殿の御屋根葺替・修理、並びに境内整備事業を中心に、先人から連綿と受け継いでまいりました伝統と数多の貴重な文化遺産を後世に伝えるべく、さらなる御社頭の尊厳護持をはかり、御神恩に報い、御神威の昂揚に努めたいと存じます。
世情いまだ厳しくご多端の折とは存じますが、本趣旨にご理解ご賛同頂き、皆様の格別の御奉賛を賜りますようお願い申し上げます。
平成二十七年十一月吉日
各位